2023.05.16
大三島、島の猟師の一日と猟師の食卓
毎朝、夜明けと共に山に入る。仕掛けた罠の見回りと夜にイノシシが何処で何をしていたのかを見て回る。2年半前、島に来て、イノシシ猟を始めた。最初はイノシシの足跡の見方も分からず罠の設置場所の検討もつかなかった。地元の猟師さんに教えてもらいながら、最初は仕掛けた罠を全部イノシシに掘り返されたりしつつイノシシの生態を学び、徐々にイノシシが捕れる様になった。
畑を荒らすので有害鳥獣と言われてはいるものの毎日イノシシの動きを追っているといろいろと考えさせられる。4月は竹林の外縁にイノシシが集まり毎晩タケノコを食い漁る。耕作放棄された田舎で問題となる広がる竹林問題だがイノシシがタケノコを食い漁ることでかなり緩和されているように思う。またイノシシが掘り返すことで石垣が崩されて道がなくなると言われるがそれも人間が放置した人工物を自然に返しているととらえることもできる。イノシシが、自然の中で増えすぎたものの抑制や、人工物の浄化を担っている、自然が派遣した先兵なのではないか、そんなふうに感じてしまう。
人間にとって有害だから駆除する。ではなく、人間が畑をするために少しだけ個体数を減らさせてもらう。間引いた個体はありがたい自然の恵みとして頂くという気持ちで捕獲している。50kgのイノシシを解体すると25kgくらいのお肉になる。この現代日本で肉の自給自足ができるのは本当に有難い。
(沢を登り山に入る)
(罠にかかったイノシシ。イノシシが暴れて土が露出しているところを土俵と呼んでイノシシが突進可能な危険地帯)
(捕獲したイノシシを自分で捌く。脂が乗った最高の肩ロース、イノシシ肉は牡丹肉とも呼ばれ鮮やかな赤色をしている)
(豚のヒレカツ(上)とイノシシのヒレカツ(下)の食べ比べ。イノシシのほうが生命力の強い味わい。むしろ牛カツに近い?)
Kura-Kura農園
Instagram @kurakurafarm
亀谷潤(かめたにじゅん)
Kura-Kura農園
愛媛県 今治市
1982年熊本県生まれ。海外を舞台に液化天然ガスプラントなどの設計、試運転職に就くが、現地での環境汚染を目の当たりにし、環境を汚染しながら拡大を続ける資本主義社会に疑問を持つ。「人間主体ではなく、まず自然があり、その傍らで自然の恩恵や自然の営みの分け前を頂く」という信念を軸に、自然への感謝を忘れない生活を志す。2021年、瀬戸内海に浮かぶ大三島に移住し、猟師・養蜂家・自然栽培の果樹農家としての挑戦を始める。2023年4月「Kura-Kura農園」を開く。
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