2016.11.01
いもむらさき
今、僕の中でもっとも流行っている色、それは「紫」です。
幼い頃は「怪しい色、悪者の色」みたいな感じで、
あまりいい印象がなかったのですが、大人になってから、
特に染めものの仕事をするようになってから好きになりました。
紫は、聖徳太子が制定した冠位十二階の制において最も高い位とされていたこと
だったり、女王クレオパトラが乗る船の帆が紫で染められたものだったり、
歴史的にみても世界中で高貴な色、神秘的な色として取り扱われています。
ちなみに藍染にも「二藍(ふたあい)」という紫の染め色があって、
藍で染めた後、紅花もしくは茜など赤色染料を使って赤を染め重ねて
紫色を出します。
ところで、秋の紫といえば…そうです「さつまいも」です。
このさつまいもを土から掘り起こした時の紫色、これが本当に美しい。
「日本の色名でいうと何だろう?」などと考えながら、
掘るたびに出てくる鮮やかな紫色に感動します。
これは掘る者だけにしか見ることができない感動の瞬間です。
そしてもう一つの感動、食べる喜び。焼き芋、天ぷら…秋の醍醐味ですよね。
でも芋のデンプン質が糖化して甘くなるのには収穫してから
少しの間寝かせないといけないので、この感動はもうしばらく“おあずけ”です。
(鮮やかな紫色をした掘りたての徳島特産のさつまいも「鳴門金時」。掘り起こした後、その場で天日乾燥させるのですが、そうするとこの色は失われてしまいます。)
(今回は、鳴門金時、パープルスイートロード、安納芋、紅はるかの4種を作りました。それぞれに特長があって、鳴門金時は一つの蔓に2,3個の大きな芋が付くのに対し、安納芋は5,6個の芋が付きます。食感は、鳴門金時は“ホクホク”、安納芋は“ネットリ”です。)
(「パープルスイートロード」。中まで紫色です。写真はハサミで割ったかのような感じですが、実はスコップが刺さって「あっ!やってしもた!」という状況です。掘る手間を省こうと蔓の近くにスコップを入れるとこうなります。「芋掘りは慎重に!」です。)
阿部正臣(あべまさおみ)
徳島県 上勝町
1975年 徳島県生まれ。藍染を始めるために徳島県上勝町に移住。藍染業の傍ら育てた野菜が、農業関連のコンテストで食味、栄養価が評価され表彰される。それから、有機農業の研修を経て、2014年に就農。味わいだけでなく、健康に寄与するような機能性に富んだ野菜の栽培を心がけている。同時に、藍染ももう一つの生業として継続。阿波踊りや空手など、古くから親しまれてきた伝統文化の継承にも意欲を燃やす。