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2020.09.28

|九州勉強会|宮崎・川越俊作さんに学ぶ「自然栽培」畑作

SHARE THE LOVE for JAPAN(以下STL)では、地域やテーマごとに参加農家が集まり学び合う勉強会が開催されています。

「宮崎の川越俊作さんの畑は本当にすごい」「絶対勉強に行った方がいい」「生業として自然栽培を展開していくなら川越さんに学べ」。以前から九州のSTL参加農家メンバーなどから川越俊作さんのお話を聞き勉強会の開催が熱望されていました。コロナ禍で参加を断念せざるを得ないメンバーも多く少人数での開催となりましたが、「この時期だからこそ学びを止めてはいけない」「栽培方法が違っても、土作りや自然の法則など応用できる考えを持ち帰って皆さんそれぞれの農業が楽になれば」と川越さんが講師を引き受けて下さり7月に勉強会が実現しました。

川越さんは、宮崎市田野町で13町規模で自然栽培の畑作をされています。代々農家のご実家で、慣行栽培や有機栽培を経て、自然の法則に則った自然栽培に至ったそうです。川越さんがお考えになる自然の法則を活かす考え方や技術、土作りの根源などについてお話して下さいました。

詳しい内容は参加者のレポートをご覧ください。

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|開催概要|

日 程:2020年7月22日(火)
講 師:宮崎県宮崎市田野町 川越俊作さん(自然栽培)
内 容:午前|圃場視察(自然栽培9年目の畑と20年以上の畑)
    午後|座学「自然栽培畑作勉強会」

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|参加者のレポート|

椛嶌剛士さん|熊本県南阿蘇村

「世の中、いろいろな農家さんがいろいろな栽培方法で野菜を育てているけど、どういう農法がいいとか悪いとかではなく、そもそも自然の原理原則というものがあり、それをどう利用活用するかが農法の違いであるのだろう」

よくそんなことを考えながら「農薬不使用、化学肥料不使用」という枠組みの中で、緑肥を活用して野菜を育てている自分にとって、自然栽培の第一人者である川越俊作さんのもとで学ぶ今回の勉強会に参加できることは大きな喜びとなりました。

午前は自然栽培9年目の畑と、20年以上という圃場を見学させていただきました。20年以上の圃場の土は団粒が120㎝の深さまであるといい、どこまで掘り下げてもフカフカでいい匂いがしました。9年目の圃場に植わっているショウガやネギ苗も、無肥料というのが信じられないくらい元気に育っていました。

「自分が行っていることは自然の再現ではなく、自然の法則を最大限活かした栽培です。まずは我を捨てる事です。」ということから講義は始まり、具体的な土づくりの手法や経営にかかわることも惜しみなく教えて下さいました。

そもそもいい畑になる土かどうか最初に吟味すること。「肥毒」を抜くために最低5年から10年はエン麦や小麦を植えて漉き込み続けること。雑草ではなく、野菜が育つ土にすること。麦も、必ず枯らしてから漉き込むこと。雑草の種を落とさないようにこまめに耕すこと。中途半端に土づくりをしてしまうよりかは、最初我慢をしたほうが近道であること。自家採取も重要であること。ちゃんとした土になると、経費もかからず最高の品質のものが慣行と変わらないような量とれること。そもそも草がほとんど生えないので中間管理も最低限で済み、空いた時間を商品開発や加工品開発にあてることができること…。

お話を聞いていて強く感じたのは、川越さんのバランス感覚でした。栽培方法、地域の農地を守る代々続く農家としての立ち位置、お母様が農薬中毒で苦しむ姿を見てきた経験、いいものを育てたいという農家としての当然の誇り、そして経営者としての責任…。生きていく中では、いろいろなことにバランスをとっていく必要があります。その在り方の答えとして「自然栽培」での営農があるという川越さんの言葉は本当に力強く、こちらの背筋も伸びる思いがしました。

いろいろなお話をお聞きできましたが、特に印象に残ったのは、川越氏の「分からない」という言葉でした。もともと生物学関連のバックグランドやキャリアを持つ川越氏が「自然栽培は、説明がつかないことが起こる。なんでそうなるか分からない。でも実際にそうなるんだ」とおっしゃる姿に、人知を超えたものに対する畏怖や畏敬の思いのようなものを感じました。自然科学を体系的にしっかりと学んだ方の口からでる言葉ならではの重みと凄みを感じました。僕も同じように謙虚な心で学び続け、自分のできる範囲で川越さんの方法を実践してみて、より深い自然の法則の学びを得られていけたら素敵だなあ、と思いました。そしていつの日か「分からない」と言えたらかっこいいなあ、と。

川越さん、貴重な晴れの一日に学びのためのお時間を頂きましてありがとうございました。そして、STL事務局の皆さま、ありがとうございました。心より御礼申し上げます。

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影沢裕之さん|熊本県南阿蘇村

今回、宮崎県田野町の川越俊作さんの圃場を見学させてもらいました。これまで20年間の農業の試行錯誤を惜しみなく公開していただき、次世代の農家の生計が成り立つ農業になるように応援してくれていてとても好感が持てました。

今回の自然栽培の見学で特に印象に残った3つをあげます。

1,自然栽培と自然農は違う
簡単に言うと
・自然農は何も付け足さない農法
・自然栽培は自然の法則を最大限活かそうとする栽培方法
ということになりそうです。自然の不変の原則に則って栽培するというのはとても共感できる点です。というか私もそのように努めているつもりです。ただ、それを目指す上での見方が違います。違う視点を得られたというのは今回すごい収穫です。

2,雑草が好むような土ではなく、野菜が好むような土にする
つまりフカフカな土にする。表面が固いと雑草が生えやすい。自然を観察しましょうとのこと。

3,植物の出すホルモンに注目している。
例えば、地面が固いと野菜自体が根からジベレリンを出して土を柔らかくする。その作用を農薬や化学肥料・さらに堆肥に至るまでが根のジベレリン生成を阻害するので、人間が余計なことをしない方が良いと考えている。
長年、慣行栽培や有機栽培で溜まった植物ホルモンを阻害する成分は耕盤の近くにとくに溜まっている。これらを「肥毒」と自然栽培では考えるとのこと。この肥毒を抜くためには緑肥(特にエン麦が野菜の根と似て細い根で良い)を植えて枯らしてからすき込む(緑のまますき込むとまた肥毒が戻ってしまうという考え方)という作業を何回(大抵5年以上)も繰り返して、肥毒が抜けた畑に蘇ると植物本来の力が発揮できるような水はけが良く・水持ちが良くかつ雑草が生えにくい畑にあるとき急に変わるとのこと。


感想 
川越さんの畑のようになるのは羨ましい。ただ明日から最低5年間は緑肥だけ作って生計は他のもので立てるのも厳しい。なので、自然の不変の原則を探り、それを利用して野菜栽培を続けるという考え方で私なりに取り入れられるところを徐々に増やして自然に優しい農業を私もどんどん進化させていきたいと感じました。
また、植物の生長や生理に注目し特にミネラルの重要性に注目したBLOF理論(Bio Logical Farming)での有機栽培と今回の自然栽培の視点はだいぶ異なると感じたが、面白いことに目指す土はどちらも「水はけが良く、水持ちの良い団粒構造の土で、根が空気を十分取り込め、耕盤がなくどこまでも柔らかでフカフカな土」ということで、登り口は違えど目指す頂上は同じという真理に近いものを見たように思えました。違う視点を持つという重要さを感じられたのが今回一番の収穫だったかもしれません。

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村田寿政さん|熊本県南阿蘇村

2年前から自分の圃場で、緑肥を利用した土作りを試しているのですが、いまいち土ができているのかが分からず、緑肥についてもっと知りたいと思っていた所、自然栽培で緑肥を利用して土作りをしている川越さんのお話が聞けるということで、今回、勉強会に参加させていただきました。

今回の勉強会で学んだこと

①緑肥のすき込むタイミングは完全に枯れてから。
(青いままだと微生物が分解しづらい。土が固まる)

②緑肥にはえん麦が良い。
(えん麦の根が野菜の根に一番似ている = 野菜が育ちやすい環境を作ることができる。トウモロコシなどは根の形が似ているソルゴーの方が良い)

③雑草は土が硬いと生える。柔らかいと生えづらい。
(野菜が育ちやすい環境を作る = 雑草が生えづらい環境を作る)

他にも、自然栽培のお話をたくさんお聞きしたのですが、その中でも上記の3つがすぐに自分の畑でも実践できそうだと思いました。今まで、畑にまく緑肥の種類や、土にすき込むタイミングなどがバラバラで、畑に腐食を増やすことしか考えていなかったのですが、今後は緑肥の種類をしっかり考えて、しっかりと枯らした状態ですき込めるように、作業スケジュールや栽培スケジュールの管理を含め見直していきたいと思います。また、今回の勉強会で改めて土作りには長い年月がかかることが分かりました。焦らず、土作りと同時に、土を観察する力もつけていきたいです。

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東樋口正邦さん|奈良県平群町

川越さんにどうしてもっと早く出会えなかったのか、と思ってしまうくらいの畑を実現している方。
しかし出会いは必然、時期も必然。
緑肥や草をすき込み、土作りをする。この基本は変わらないが、マルチ、有機肥料、等々やってきたが、納得のいく方法は見つからなかった。「土が出来れば草は生えなくなる」という師匠の故・山下一穂さんの言葉と、先輩からチラッと聞いた川越さんの畑の話を思い出し、草が生えなくなるまで代掻きみたいに耕耘を繰り返してみてはどうか、と考えた矢先、今回の勉強会が開催された。

自然とはなんぞや?なぜ草は生える?それは我では無いですか?仏教のような問答も心地よく、ひたすら自分の進む方向へ進み、畑で表現する、という姿勢に勇気づけられた。

見学はじめの畑は生姜が栽培中。感じた事は、匂いが少ない事。そして次の畑は、腐食還元を行っている、要は枯れた麦の茎葉をすき込んでいる畑で、うちの畑と同じ匂いがした事。つまり、匂いは微生物の活性を表しているように感じた。川越さんもそうだと答えてくれた。

深さ20cm以下の所に硬盤層が出来るのは肥料分を入れるからだとおっしゃられた。肥毒とも呼ばれた。青草どころか枯れ切っていない草も肥料分だから肥毒になる。指摘されればその通りだが、そのボヤけていた肥毒の部分をはっきり意識する為に、どれほどの歳月が掛かったかと思うと、頭が上がらない。有難い。

座学では、雑草でできる土は雑草のための土、野菜のできる土は野菜と根っこの形が近い麦系統で作っていく、とおっしゃられた。こればっかりは、言われてもピンとこない。実践してみようと思う。

特に深く印象を受けた内容です。ありがとうございました。

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杉浦秀幸さん|山梨県北杜市

畑を視察して
自然栽培暦20年の圃場を案内して頂き、もう驚きでした。実際に土に触れ・見たものは今までに出会った事のない『土』。色は黒色でとても柔らかく、暖かい。私の圃場の土とは全く別物でした。こういう『土』が良い土なんだと初めて感じました。20年間、緑肥を使用し、腐植を入れ続け管理してきた畑の土を目に出来た事はとても貴重な経験です。

講義では自然栽培の考えかたや土づくりの管理等学べ、時間はかかりますが、わたしもすべての圃場という訳にはいきませんが、一部の圃場で取り組んでいきたいと思います。

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松﨑悠生さん|愛媛県松山市

今年4月から新規就農した松﨑です。就農するまでの数年間、様々な農業研修や各地の農家さんを訪ねてお話を伺うなどして、自身の農業の方向性を模索してきました。

今年度のSTLの「挑戦者」同期である野﨑さんから、地元で長年自然栽培を実践されている川越俊作さんのお話を伺ってからというもの、いつかお話を聞きたいと思っていたところに今回の勉強会の話が舞い込んできたので絶対に行かなくては!と思い参加させて頂きました。

自然〇〇という農法は自分が知るだけでもいくつか存在し、それぞれに考え方や物事の捉え方も違うイメージがあったので「自然栽培」がいったいどのようなものなのか想像もつかないままの参加となりました。



現地に前乗りして、川越俊作さんを囲んでの懇親会。

実際の自然栽培への取り組み方は明日の勉強会でお話しますとのことで、懇親会の席では農家の先輩として、川越俊作さんがこれまでに継続と実践、積み上げてきたことなどから得た知識や経験などを語ってもらい、その言葉のひとつひとつに説得力があり附に落ちることが沢山ありました。(ここで皆さんとお話できただけでも来た甲斐がありました!)



勉強会当日、全員が集合したところでまずは圃場の見学から。この時期はまだ畑に植っているものがそんなにないとのお話でしたが、まず最初に訪れたのは自然栽培9年目の圃場。ここにはメインの生姜と九条ネギの苗場、少しの果菜類がありました。川越さん曰く、自身の圃場の中では草が生えているほうとのお話でしたが、畝や、畝間にはほとんど草は生えておらず、およそ10ヘクの面積を4名でカバーしていると聞き驚きました!

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〈草がほぼ生えていない生姜の圃場〉

次に訪れたのは自然栽培20年の畑。ここの土はもう異次元!手を土の中に入れれば力を入れなくても肘までズボッと入るくらいの団粒構造が出来上がっており、土も無味無臭。足で踏めば踏むほどよく沈み込みフカフカ。黒田五寸が十寸になってしまうほどの深い作土層のお話は驚きと笑いを誘っていました。

土が出来てくれば耕耘時に農耕機械に負荷がかからず維持費もかからなくなるといいことづくめ。

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〈土の感触を楽しむ村田さん〉

倉庫に戻り勉強会までの小休止の間、川越さんが自身の会社で製造販売されている自然栽培の大根で作ったたくあんと玉ねぎのスープでもてなしてくれました。たくあんは水分が少なく身がしまっていて食べ応えのある食感。うまく表現はできませんがしっかりと命をいただいているといった感じ。玉ねぎのスープは玉ねぎのみのやさしい甘みでいくらでも飲めるような体にふっと染み込む味でした。そしていよいよ勉強会。



勉強会ではまず自然栽培の理念から。
1.自然規範
2.自然順応
3.自然尊重
この3点が自然栽培を行う上で大切な理念になっているとのこと。人や自然から学び自身のエゴは捨てるといった内容。

「自然栽培」とは自然の再現ではなく、自然の法則を最大限に活かした栽培である。無農薬・無肥料・自家採種の実践、継続。種と苗以外は圃場に持ち込まない。

次に、土をつくるということを実際にどのような段階を経て積み上げていくかという話です。ここが一番気にはなっていたところです。

まず、作土層の下にある冷たく固まった層(硬盤層)を取り除くことがなによりも重要。この硬盤層は長年使用し続けた肥料や堆肥などが地中で固まってしまった肥毒と呼ばれるもので、これが存在することにより作物が健全に育たない原因を作っている。(虫害・病気など)

ではどのようにしてこの肥毒を取り除くのか?川越さんたちのグループではエンバク・麦・ソルゴー(特に麦系)などを利用して根から肥毒を吸い上げてそれらを腐植還元して土を作っているとのことでした。

この吸い上げてもらった植物をどのように処理するかがポイントで、命を全うさせてから(枯れてから)土に腐植還元させなければならないとのお話。

青刈りや枯れきった状態でないまま土にすき込むとこれらがまた肥毒になってしまう。

中途半端にやらず、年に一作、自然のペースで土を作っていく。土の状態にもよるが、最低でも5年はこれを繰り返して麦以外の作物は植えない。

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腐植還元してから半年は成熟させたほうがエチレンの濃度(エチレンの濃度が高いと野菜の種の発芽率に影響して発芽しにくい)が下がって発芽しないというリスクが抑えられる。
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野菜との相性がこれまでに試した中で一番良かったのが麦だったらしく、作物の根の張り方が近いものをマッチングさせるといい成果があがるらしい。その中で麦はどの作物にも相性がよいとのこと。

あとは野菜の植物ホルモンがもたらす生長コントロールを土の固さで行うという驚きの農業技術なども軽く触れてもらえたのですがこのあたりはまた別に勉強が必要だと感じました。

質疑応答を終え、最後に元田んぼだった圃場へ。ここは自然栽培に切り替えて20年の圃場ということでしたが、団粒構造は地上部から70センチの所まで作られていてふかふかに。土が変わってきたと実感したのは12年目のことだったとのお話。。。

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〈元田んぼの圃場の土〉

自分自身も元田んぼを畑に転換していく圃場ばかりなので勇気づけられるとともに長い年月をかけて土を育てていかなければならないという現実も痛感しました。

川越さんは、あくまでも自分のやり方は参考程度にして、自身の環境や状況に沿った農業を大前提としてその中で今回の話で得た内容を自分なりに落とし込んでいけばいいとおっしゃっていました。

今回の勉強会を通し、自分がこれまでに得た農業知識の中でいろいろと模索しながらやってきたことがかなりクリアになり、やるべき事が見えたように感じます。

また、今回の勉強会で出会った方々と
の様々なお話がこれからの自分の農業に必ず還元・調和されていくと思います。

今回このような場を企画・提供していただいたSTLの皆様、農家の先輩川越さん、現地でのサポートに尽力していただいた野崎さんに感謝いたします。

新米農家にとっては全てがまだまだこれからです!よりいっそう頑張っていきます!ありがとうございました!

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〈懇親会でのトーク〉

・野菜には作っている人の個性があらわれる。
・結局は人なんだ。
・自分は先生じゃない。あくまでも少し先を走っている農業の先輩。
・畑や人が教えてくれた。
・全部包み隠さずお見せする。嘘はバレるしこれまでやってきていることに嘘偽りはない。
・自然という言葉の捉え方で全然やり方が変わってきてしまう。
・あくまでも自然の法則に従う。自然の再現ではない。
・スピリチュアルは好きではないが結局スピリチュアル的な要素、頭では理解できないことがありうる。
・人は昔の農法だというけど自分は最先端の農法だと確信してやっている。
・10ヘクを4人で回せる。年々手間がなくなるからその分の時間を商品開発や企画に使える。
・農法ごとに、比べる必要はない。みんな目指すところは最終的に一緒なのだからいがみあったりひがんだりする必要ない。
・すべては調和。
・野菜は犠牲者。弱っている野菜を見て助けない(施肥や防除)のは人としてどうなの?農薬を使いたくないは自分のエゴ。

など。一部覚え違いがあったらすみません、川越さん。

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