SHARE THE LOVE

2017.10.13

鬼を笑わす半人前百姓

まだ就農前の頃、京都は丹波の新規就農された方の畑を見に行った時に聞いた言葉が印象に残っている。

「人参は太陽熱養生(太陽熱を利用して土壌を改善する方法)をするに限る。人参畑の半分が空いているが、播種途中に播種機が壊れたので、残りは他の作物に回そうと思う」という言葉だ。「播種機が壊れたら諦めるって、手があるじゃないか」とその頃は思った。しかし、今となっては同感だ。一度、人参のコート種子(人参のタネは細かいため、播種し易いようにマーブルチョコのように一粒ずつコーティングされたもの)を手蒔きしたことがあるが、1a播くのに半日あっても足りない。かたや、播種機では15分もあれば播ける。それを経験すると、播種機が壊れる心的ダメージはよくわかる。

次の写真が今年のうちの人参畑。

tohiguchi13-2

左側が、畑の準備を畝立て整地まで終わらせた後、降雨を待って透明ビニールを掛けて、太陽熱養生をした畝。右の畝は、左側と同時に畝立て整地までしたが、台風の雨が強くなり作業を断念。その後も他作業に追われて太陽熱養生はせず、初期の草を播種前日に刈払機のナイロンカッター(ナイロンコードを取り付けた刈払機)で草を飛ばした畝だ。

太陽熱養生の効果は、一目瞭然。左の畝はしっかりと発芽した人参が3列確認できる。人参栽培の要、発芽は完璧だ。右側にも同じだけ人参が発芽しているが、同時に草も元気に発芽してしまった。

IMG-5356

(右側の畝。草の間でしっかりと育つ人参。)

右側の畝では、これから初期の草取り、間引きしながらの草取りが付いて回る。
作物や、時期にもよるが、播種機や太陽熱養生のような、ものすごい効果のある技術は使うべきだ。

しかし、そこまでの準備、段取りが出来ていないと、雨が降っても太陽熱養生が出来ないし、種を蒔いても時期が悪いと収穫までたどり着けないこともしばしばだ。
全体を通じた作業性の向上、身の丈を知った栽培面積、何より畑で感じたことを活かすセンス。そういった所を一つ一つクリアして、初めて一人前なんだな、と思う今日この頃。半人前百姓は地に這いつくばるしか能がないが、それでも楽しい、気持ちいい日々を畑で過ごさせてもらっている。

季節の移り変わり方、それに呼応した畑の準備のタイミングなど、体感で会得して初めて実行に移せる。お隣さんの「草生やして儲かりまっかー!」というお言葉には素直に「儲かる訳ないでしょー!」と笑い飛ばして、出来ていないことを思うより、来年にこの勉強を託す。「来年のことを言うと鬼が笑う」という。鬼を笑わす半人前だ。
一人前なんて程遠いが、現状を把握し、落胆すること無く、上を向いておいしい野菜を作っていきたい。

challenger

東樋口正邦

東樋口正邦(とうひぐちまさくに)
奈良県 平群町

1981年奈良県生まれ。京都大学理学部で宇宙物理学を学ぶ。高知の山下農園で3年間研修し農場長を務めた後、2015年に奈良の実家に帰って就農。妻と自分の愛称を冠した「eminini organic farm」では「畑から虹を」をモットーとしている。

写真家の眼 東樋口正邦

過去の記事を読む

BACK TO TOP