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2018.06.03

初乳を飲めない豚に明日はない

うちの豚舎では、年間に約5,000頭の豚を出荷しています。
平均すると1日に約13頭。
豚の出産は1回に13~14頭以上の子豚を生むので、
ほぼ毎日子豚が生まれていることになります。
ちなみに飼育頭数は常時約2,500頭で、北海道では平均くらいの規模です。

僕が朝、出勤して初めにすることは、夜中に産まれた豚がいるかの確認です。

人間とは違い、子豚は免疫不全(病気に対する免疫力を持たない状態)で生まれてきます。
免疫不全のままでは、どれだけ豚舎の衛生管理を徹底しても、
空気中や母豚が持つ病原菌に感染し、やがて死んでしまいます。

免疫力を手に入れる唯一の方法は、母豚の「初乳」を飲むことです。

初乳に含まれる抗体や免疫物質を摂取することで、
子豚は病気から身を守る免疫力を手に入れます。
「初乳を飲めない豚に明日はない」と専門家が語るほど、初乳はとても重要なのです。

ただし、次の2つの理由で、子豚が初乳から免疫力を得るには時間制限があります。
① 母豚の初乳に含まれる抗体や免疫物質は、分娩後から急速に減少する
② 分娩から24時間を超えると、子豚は抗体や免疫物質を摂り込めなくなる

できれば6時間以内、遅くとも12時間以内に初乳を飲ませることが推奨されています。
24時間看護体制が理想的なのですが、人手が足りずうちの農場ではとてもできません。

その代わり、朝一番に、夜中に出産した豚がいないか確認して、授乳の介助をします。
子豚は産まれた直後から競い合いながら母乳を飲むので、
自力で母乳にありつけない身体の小さな豚から優先的に初乳を飲ませていきます。

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(子豚は産まれてすぐに熾烈な生存競争が始まります。)

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(同じ母豚から産まれた兄弟豚。体格差にはバラつきがあります。)

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(自力で初乳にありつけない小さな豚は人の手で初乳を飲ませます。)

「子豚が1匹でも多く生き残れるかどうかは自分次第。」
動物の命を扱う仕事をしている身として、日々自分に言い聞かせています。

challenger

村上昭平

村上昭平(むらかみしょうへい)
北海道 上富良野町

1989年北海道生まれ。北海道大学経済学部卒業後、東京の外食企業やコンサルティング会社で働く。家業を継ぐと決めてから有機農業の学校に通い、2018年1月に家族が営む「農事組合法人一心生産組合」で就農。伯父、父、母、従兄や兄弟と共に大家族で働く。

写真家の眼 村上 昭平

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